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エバラ時報 No.210

昨今の学術論文

電磁超音波共鳴法によるNi基超耐熱合金のクリープ損傷評価

 電磁超音波共鳴法(EMAR法)は,非接触で超音波を送受信できる電磁超音波探触子(EMAT)に超音波共鳴法を適用した方法で,接触に関するエネルギー損失がないので,材料の絶対的な超音波減衰係数測定が可能である。本研究ではEMAR法を用いてNi基耐熱合金ワスパロイのクリープ損傷を評価した。クリープ試験は大気中1073Kの温度下で数種類の単軸応力下で行った。クリープ進行に伴う1~6MHzの周波数範囲における超音波減衰を測定した。超音波減衰は音速よりもクリープ損傷に敏感に反応した。クリープ寿命の35~40%の間で超音波減衰は極大値を示し音速はわずかな減少を示した。これは負荷応力に依存していなかった。この現象はクリープの進行に伴う微視組織の変化,特に転位の可動性とγ’相の凝集・粗大化に起因することが分かった。そのことは透過型電子顕微鏡による転位組織の観察から裏付けられた。EMAR法はNi基耐熱合金材料のクリープ損傷評価と寿命予測を行える可能性をもっている。

昇温型吸収ヒートポンプの特性解析

 昇温型吸収ヒートポンプは,温水排熱などを直接的な駆動源として,より高温のエネルギーを得る装置であり,排熱利用サイクルとして期待されている。特に,高温エネルギーとして広範な利用先のある蒸気を製造するヒートポンプが期待されている。本研究は,昇温型吸収ヒートポンプサイクルに可逆サイクルを仮定して理論解析を行い,COP,昇温特性及びその限界値をカルノーサイクルと比較して明らかにした。またH2O-LiBrを用いたヒートポンプのシミュレーションモデルを作り,実機レベルの性能を検討した。熱源温水の流し方としては,再生器から蒸発器へと直列に供給する方式がCOP及び昇温特性から判断して最良であった。

交通信号機非常用燃料電池システムの開発

 従来,重要な交差点には信号機の非常用電源装置として,ディーゼルエンジン式発動発電機が設置されてきたが,使用時及び月1回程度の管理運転時に発生する騒音や黒煙が問題となっていた。
 一方,燃料電池は省エネルギー性,並びに環境保全性が良好なことから多方面にわたりその利用が考えられている。その中でも特に水素を燃料とする固体高分子形燃料電池は構造がシンプルでまた起動時間が短く非常用電源として適する。このような利点を活かし,水素を燃料とする空冷式1kW級固体高分子形燃料電池を交通信号機の非常用電源として適用する開発を行い,実証試験機を完成させた。更に実際の交差点で実証試験を実施し,良好な基本性能を確認した。

吐出し圧力50MPa級の製鉄所向けデスケーリングポンプ

 吐出し圧力50MPa級のデスケーリングポンプを開発した。開発に当っては,吐出し圧力の高低(3.2~49MPa)を短周期で繰返す急変速デスケーリングポンプの技術的課題であった高い繰返し応力と高サイクルの疲労問題を,ノズルの開口部の形状を楕円形状に整形し応力集中を低減することで解決した。

中国/浙江省嘉興発電所向け循環水ポンプの納入

 発展著しい中国の重要な電力供給源として位置付けられている嘉興発電所(中国浙江省嘉興市)3,4,5,6号機向けに循環水ポンプを8台納入した。高潮位差に対応するため全長が長く,またプラント運転上最適制御のため可動羽根ポンプを採用し運転効率の向上(使用電力の低減)を図っている。羽根角制御装置のアクチュエータとしては電子制御式を採用し,防食装置としては電気防食法を採用するなど要素的な特長もある。

米国シカゴ向け大形ロートバルブ

 米国シカゴ地域の洪水対策プロジェクトにおいて放水路の流量制御用として,大形ロートバルブ6台を納入した。本バルブ(6台中2台)の使用条件の特徴として,流速が45m/sと非常に高流速であること,開閉時間が約30分と長いこと,開閉時のキャビテーションによる壊食や騒音,振動が予想されることが挙げられる。壊食防止対策として,弁胴及び弁体をステンレス鋼板とステンレス肉盛にて製作,キャビテーション緩和策として流れ解析結果に基づき,圧縮空気吹込み口を設置した。また高トルク対策として大容量・高リフト開閉機構(メカニズム)を,潤滑対策としてグリス注入タイプの軸受を採用した。このほかシリンダ位置検出用の防水型近接スイッチを設置するなど,新しい試みも含まれている。