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エバラ時報 No.255

OPENNESS: It is more blessed to give than to receive!

荏原式オープンイノべーションとは
-荏原式オープンイノべーションは何故成功したのか?-

 2009年の㈱荏原総合研究所解散を機に始まった荏原式オープンイノベーションとは何か?10年目にして温故知新。過去を振り返り,現在を見直し,将来を俯瞰します。解散当時に感じた研究の2大危機とは①研究と製品開発の乖離と②低い研究効率でした。その後①研究目標を一旦「製品競争力改善」に定め,②研究効率刷新目的で年度研究廃止,研究陣は事業部と兼任で実施するというバーチャル研究所構想を立ち上げました。「小さく生んで大きく育てる」を基本概念とし,研究はまず3名で大学とのコラボレーションを開始,これがEOI。その後専任者ゼロで製品開発のための研究を実施するEOLを始め,新規事業創出のためのEIX,中小支援団体と協力して創出した研究を支援するサプライヤ組織がEOS,ここまでが現在です。「荏原式オープンイノベーション」はまだ道半ば,これからまだまだ進化します。

座談会 エバラの研究体制
-研究と事業を行き来して未来を生み出す-

 エバラ・オープン・イノベーション,エバラ・オープン・ラボラトリーというユニークな研究体制を発足・継続してきた荏原製作所。今回は,新たな試みもスタートしている研究体制の現在と未来像について伺いました。

EOL特集論文の紹介

 荏原製作所では2010年からEOIやEOLといった新しい研究体制を発足させ,独自の方式で製品基盤技術の強化と製品競争力強化に資する研究開発を実施してきた。本特集では,これまでにEOLで実施してきた研究の中から,以下6件の研究について論文形式でより詳細に記述したものを掲載する。

大橋−秋元クライテリアに関する数値的考察
第1報 単純流体加振系の解析

 ポンプのキャビテーションサージは,流体機械内部の流動と,流体機械上流下流の管路系システム挙動との連成問題である。本研究では,キャビテーションサージ解析技術構築の基礎的な検討として,管路系システムにおいて,圧縮性を考慮すべき周波数の範囲を示唆する大橋- 秋元クライテリアの妥当性を,集中定数系解析と分布定数系解析との比較から評価した。解析対象はキャビテーションの生じない,単純な流体加振系とした。分布定数系解析では,特性曲線法による1次元解析を実施した。その結果,管摩擦によって初期条件の影響が十分消散する場合は,両者のクライテリアは妥当な指標であることか明らかとなった。

産業用立軸多段ポンプへの形態最適化設計適用に関する研究

 本研究の目的は,JAXA Dynamic Design Team(JAXA- DDT)によって開発されている形態最適化設計技術を産業用立軸多段ポンプへ適用しその効果を確認することである。形態最適化設計技術の産業応用に当たっては,特にコスト・振動安定性・流体性能のトレードオフ関係が重要となる。形態最適化設計技術を適用した結果,従来のポンプと比較してコスト削減・振動安定性の向上・流体性能の向上が期待できる新しいポンプ形態を得られることが明らかになった。また,本研究で提案・実施した最適化設計プロセスが産業用立軸多段ポンプに適していることも併せて確認できた。

吸込水槽の乱流渦制御に関する研究の展望

 自然界と人工的な流れのほとんどは乱れを含んであり,このような流れを乱流という。乱流がもつ時空間スケールの不規則な渦運動はエネルギー損失と振動,騒音の主な原因となる。一方,乱流がもつ強い拡散性と混合性は,燃焼と伝熱,洗浄の効率向上に使われている。乱流を正確に理解し,予測及び抑制する技術は,流体機械の安定化と高効率化の実現に欠かせない。本稿では,乱流渦の中で工業的に重要度が高い吸込水槽内の渦に関して,荏原製作所の研究開発を振り返った。また,吸込水槽内に生じる渦の中で,水中渦のアクティブ制御技術を開発するため,モード解析を応用した研究事例を紹介した。流体力学とデータサイエンスの融合が,潜んでいる乱流の特徴を明らかにし,乱流制御技術の更なる発展につながることを期待する。

油潤滑軸受の摩耗診断技術の開発

 機械設備の維持・管理において,状態監視保全もしくはプロアクティブ保全を採用して,より低コストに機械の健全性を維持するため,油潤滑軸受の摩耗診断技術を検討した。すべり軸受の摩擦・摩耗メカニズム解明においては,実機から回収した油を参考に金属粉を混入させた模擬汚損油を作成し,ブロックオンリング試験で金属粒子混入によるしゅう動面への影響を調べた。また,潤滑油診断法の検討では,潤滑油のISO 清浄度コードとメンブランパッチの色から,潤滑油状態と機械状態を診断できる新たな指標を提案した。また,現場で実施可能な新たな潤滑油分析方法の開発を行った。

境界要素法を用いた多機能電解めっき解析システムの開発

 近年LSI配線の形成法として電解銅めっきが広く普及しているが,配線の微細化に伴いウェーハ端部の膜厚が極端に高くなるターミナルエフェクトの問題が顕著となっている。めっき工程にて可能な限り膜厚分布を均一にする必要があるが,最適な条件を求めるには長年の経験や多くの実験を要するため,めっきプロセスの構築に数値解析を併用することが一般的になってきている。著者らはウェーハの下地膜抵抗,多数電極,遮蔽板,高抵抗体を取り扱った問題に対し,ベクトル型の境界条件及び領域分割法を適用した境界要素法を適用し,数値解析と実験との比較によって開発した手法の妥当性を示した。

基板(ウェーハ)洗浄・乾燥に関する基礎的研究

 本研究では,半導体製造工程の一つであるCMP 後のウェーハ洗浄工程について,可視化実験を通じ流体工学的な観点から,そのメカニズムを解明して,様々な条件下で最適な洗浄方法を提案できる現象のモデル化の構築を目的としている。そのため,可視化実験,流動特性,せん断流れ特性,液置換特性,液滴の蒸発・除去特性についての基礎的な研究を行っており,ここではその一部を紹介する。

「腐食防食講座-高温腐食の基礎と対策技術-」
第5報:石油精製プラント用動力回収タービンにおける高温腐食と対策

 石油精製プラント用動力回収タービン(FCC 用ガスエキスパンダタービン)における高温硫化腐食事例とその対策技術について概説した。FCC 用ガスエキスパンダタービンの運転環境と,タービンローターに使用されるUNS N07001(Ni基耐熱合金)の高温硫化腐食挙動の特徴について述べ,その対策技術として,クロム拡散浸透処理,スチームクーリングシステム,及び耐硫化腐食性合金(RK1000)の開発について紹介した。