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Project 4 次代に挑む

百年間継承した技術を未来へとつなぐ

ポンプの組立プロセスにおいて、ベテランの職人とともに、自ら作業着を汚し、油まみれになりながら、ものづくりの現場で奮闘している。そんなMは、職人的な勘や経験値をデータ化・マニュアル化する技術・技能の継承に挑んでいる。

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M.T/風水力機械カンパニー
カスタムポンプ事業部/2005年入社

産業用機械エンジニアコース
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Phase1職人の技から

荏原製作所のポンプ組立・仕上げの技術は、百年の歳月の中で脈々と磨かれてきた。職人から次の世代の職人へ、いわば師弟関係の中で受け継がれてきた技術である。

「ベテランの職人は指の感覚で1/100、1/1000の違いがわかる、あるいは金属を叩く音の違いでその材質の良し悪しを判断できる、まさに“神業”の持ち主です」。

一方で、職人たちの高齢化は進み、その技術の継承が大きな問題になっている。今の時代の速度にあわせ、迅速かつ効率的に若手職人に継承しなければならない。ベテラン職人たちが数十年かかって体得した職人技の継承には、何らかの対策が必要である。そこで荏原では、技術・技能の伝承をテーマに、職人的な勘や経験値をデータ・マニュアル化する取り組みを行っている。これは富津工場の生産革新運動「FIT(Futtsu Innovation Total Productivity)」の一環でもあり、Mはこのプロジェクトの現場リーダー格である。

「百年の技術の伝承を導く、というミッションに惹かれて荏原の門を叩き、入社してすぐ、組立・仕上げの現場に入りました。ベテランの職人から“技”を学ぶアプローチを続け、日々油まみれになり、職人からの厳しい手ほどきを受けてきました。そして、現在、自分なりに技術継承の方法を考え、さまざまな角度からのチャレンジを行っています」。

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Phase2技術の見える化へ

まずは、組立・仕上げのフローを写真なども入れながら手順書としてまとめて“見える化”する。また、例えば今まで職人の感覚で判断してきた精度を測定器で測れるようにするなど、“自動化”の可能性を探り、プロセス改善を行う。そして若手の組立工への技術教育も同時に進めながら、現場の技術の“永年化”にトライする。一方、製造現場の生の声を上流工程にもフィードバック。例えば設計・開発の段階で、なるべく組立・仕上げをシンプルにできる方法を考えてもらう。さらには組立・仕上げの前後工程とも連携して、スムーズな製造プロセスの流れをつくる“平準化”も追求する……等々。Mたちの多角的・多面的なアプローチは着実な成果を上げている。

「ベテラン職人と若手組立工メンバーのスキル差は歴然ですが、見える化・自動化・永年化・平準化へのトライによって、ギャップは徐々に埋まってきています。もちろん若手もベテランの技を学ぶ最大限の努力を続けています。そして、ベテラン職人たちも、ものづくりの極意を次世代に伝える情熱を見せてくれています。あとは私が触媒の役割を果たして、さまざまな挑戦の融合によるシナジーを生み、化学反応を起こして、より大きな成果を目指したいのです」。

Mは現在、富津工場全体の生産革新運動FITの進捗を見据え、また、自らが担当する組立・仕上げプロセスにおける技術継承の成果も鑑み、そこから見えてくる課題とも向き合っている。

「FITが目指すのが“全体最適”なら、我々が極めるのは“部分最適”です。これからは双方の観点を踏まえてのすり合わせが重要になってくると考えています。我々の取り組みが、他の工程、ひいては工場全体に、良い影響を与えていく……そんな展開も視野に入れたい。理想は、我々のチャレンジが起爆剤となって、富津工場の意識改革をリードする流れを創ること。やるからには、そのくらいの影響力を生みたいですね」。

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Phase3そしてイノベーションの未来へ

技術の見える化を目指す組立・仕上げプロセスの手順書は、従来の文字ベースのものから今では図解や写真、計算式を用いてさらにわかりやすいものになってきた。また、実作業で起こった問題、見つかった課題などを随時吸収し、最新の手順書へと反映する仕組みもできつつあるという。社内の部門やチームを超えた建設的な議論も活発に行われ、変革ムーブメントのパワーは高まるばかりだ。

「現場のチャレンジは荏原が続く限り、これからも続いていきます。地道な努力が、いつか実を結ぶことを願って、絶えず限界に挑み続ける。百年の技術の継承は、我々の双肩にかかっているわけで、ここで途絶えさせるわけにはいきません」。

Mは技術継承を果たしながらも、さらなる進化、イノベーションを目指している。今の継承レベルに満足していては世界と闘えないからだ。

「“ポンプのEBARA”の名を、ここ富津から世界へとアピールするためにも、今以上にレベルを上げていかなければなりません。これからは製造サイドからも積極的に開発サイド、営業サイドへの働きかけをしていきたい。さらにはマザー工場としての自覚を新たにして、世界中の生産拠点への波及力も意識していく。そうして、我々自身も、さらなる高みを目指していきたいですね」。

Mの視座は、営業、マーケティング、開発、国内外の工場、そして未来もとらえている。カスタムポンプのものづくりの現場から発信する革新力が、荏原全体に大きな影響を与えていく。そんな日がくるのも、そう遠い将来のことではないのかもしれない。