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Project 7 独創に挑む

「独創」という夢に向かう情熱。
そこにはEBARAが次代を託す製品の
産声があがり始めている。 カスタムポンプの省エネ化を担う新型の変速機開発プロジェクト

発電所などのプラントで活躍する大型ポンプは「水」という自然と対峙する精密機械である。流量や圧力がたえず変化するなか、長期間にわたってノンストップで稼働しなければならない。そのポンプとモータの中間に位置して、ポンプの動きを制御するのが変速機だ。入社1年目が終わろうというとき、若きエンジニアは新しい変速機の開発プロジェクトに招集、EBARAの夢が託された。

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H.I/風水力機械カンパニー
カスタムポンプ事業部/2014年入社

産業用機械エンジニアコース
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Phase1ものづくりの夢に向けた、
新たな一歩と大いなるミッション

2011年秋、Iは、荏原製作所のインターンシップに応募し、初めて富津事業所の工場棟を訪れた。その体験を経て、Iは自分が歩むべき道が見えてきた気がした。

Iがものづくりに興味を抱くようになったきっかけは、中学校時代に出会った技術・家庭の先生だったという。その後、工業高等専門学校に進み、大学に編入して機械工学の勉強を続けた。そして、ものづくりへの情熱を膨らませながら、少しずつ将来の夢を思い描くようになった。

「人の暮らしや社会に貢献できるダイナミックな機械をつくりたい……」

そんな夢を実現するための進路が、荏原製作所との出会いによって明確になった。2014年、Iは入社すると、富津事業所に配属となり、再び工場棟に足を踏み入れた。そう、カスタムポンプの若き開発エンジニアとして。

入社1年目が終わろうという2015年3月。「I君、新しい開発プロジェクトを専任でやってくれ」この一言を契機に、これまでポンプの評価試験などに携わり基礎知識を学んでいたIの仕事が急展開し始めた。新しい変速機の開発に挑むプロジェクトのメンバーに選ばれたのだ。

この変速機とは、ポンプとモータの中間に存在する装置。自動車のオートマチックトランスミッションを思い浮かべるとわかりやすいだろう。流量や圧力などに応じてポンプの回転数を制御し、システム全体の省エネを実現する重要なコンポーネントだ。Iに声をかけてきた上司は、荏原製作所きっての変速機のスペシャリスト。その豊富な知識と経験を肌で学ぶ絶好のチャンスである。

ところが、Iがプロジェクトに参加して1ヵ月も経たないうちに状況がまた急展開する。その上司が他の部署に異動となってしまったのである。

「大丈夫、兼任という立場で常にサポートするから思いっきりチャレンジしてみなさい」

上司は、これまでしたためてきた変速機の専門資料をすべてIに託すと、そう告げてIの背中を押した。

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Phase2手探りのようにして
試験機の設計を進めていった

Iが開発することになった変速機は、荏原製作所としても初となるタイプで、業界でもほとんど技術情報は露出していなかった。自動車の変速機に同じ原理のものがあり、それが参考にはなったが、そもそも自動車とポンプではあらゆる面で条件が異なる。Iは、元上司に随時アドバイスを仰ぎながら、手探りのようにしてファーストステップとなる試験機の設計を進めていった。

開発が新たなフェイズを迎えたのは、8ヵ月後の2015年11月のこと。Iが作成した設計図をもとに、いよいよ試験機が組み立てられることになったのだ。Iは、部品の製作を担当する協力メーカーのもとに単身で出張した。そして、1週間に及ぶ作業の後、ついに試験機が組み上げられた。

「おお……」。Iは、その試験機の姿を見てしばらく言葉が出なかった。中学生の頃から抱いていた夢が一歩前進して、じわじわと嬉しさがこみ上げてきた。

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Phase3近い将来、世界の各地で
夢が叶う時がやってくるはずだ

ウィーン。開発棟の片隅でモータの心地良い駆動音とともに試験機が初めて動き始めた。Iはほっと安心するとともに、またひとつ大きな達成感を味わった。自分が設計した機械の動く姿を目の当たりにできるのだから、エンジニアとしてこれほど楽しいことはない。

2015年12月、富津事業所の開発棟で評価試験がスタートした。今後、約1年間にわたり試験機による評価・分析・改良という地道な作業が続く。そして、次のステップはいよいよ実機の製作ということになる。

この1年を振り返り、Iには忘れられないひと言がある。試験機の組み立てを見届け、出張先から元上司に報告の電話をしたときのことだ。

「そうか、お疲れ様!」。なにげない言葉かもしれないが、常日頃から厳しく口数の少ない元上司だけにそのひと言が心にしみた。おそらく変速機のスペシャリストとしての後継をIに期待しているのだろう。

近い将来、Iが開発した変速機がプラントで稼働し、世界各地で社会に貢献する日がやってくる。そんな夢が叶ったとき、Iがどんなエンジニアに成長しているのか楽しみだ。