2022年03月09日
当館が所蔵する重要文化財2件(「宗峰妙超墨跡 法語」「法華経絵巻」)の修理が、コロナ禍による延長を含む2年半の月日を経て完了いたしました。
いずれも鎌倉時代に制作された貴重な文化財であり、令和元年度ならびに令和2年度の「国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金」および「東京都文化財保存事業費補助金」の交付を受け、文化庁・東京都のご協力の下、美術品修理(絵画・書跡)を専門とする岡墨光堂の「装潢(そうこう)師」と呼ばれる優れた修理技術者による緻密な調査と長期にわたる繊細な作業が進められました。
修理以前、作品には折れや亀裂、糊離れが発生しており、紙の欠失箇所も見受けられました。掛軸・巻物という形状であることから、巻いたり解いたりを繰り返すことによる経年の劣化が生じてしまっていたのです。しかし、今回の修理で「汚れの除去」「折れ・亀裂・糊離れの補修」「同質の補修紙を作製の上、欠失箇所に補填する」などの工程を経て、より制作当時に近い状態を取り戻すことができました。また、「剥落止め」や紙の端を裏面から保護する「足し紙」など、今後の展示と後世への継承に備えた対策も講じられました。
特に「法華経絵巻」の修理では、紙継ぎの部分に本紙の一部の可能性がある紙片(絵画や墨線なし)が挟まっていることが分かりました。この紙片を残したまま修理を行うと、厚みが増し、折れ等の新たな損傷を誘発することが懸念されたため、今回の修理ではこの紙片を取り外し、別置保存することにいたしました。
2作品はリニューアルオープン後の畠山記念館展示室にて公開予定です。ぜひお楽しみに。
京都 大徳寺を創建した鎌倉時代後期の臨済宗の僧、宗峰妙超(1282~1337)が、参禅していた明輪禅尼に与えたもの。
重要文化財 宗峰妙超墨跡 法語 鎌倉時代(本紙全体)
法華経絵巻とは、法華経二十八品に説かれる内容を、絵と言葉で解説したもの。もともと二十八品が備わっていたと考えられるが、現存するのは本図を含め3件のみ。
重要文化財 法華経絵巻 鎌倉時代(部分)