表2-1 希土類元素を添加した実用耐熱合金例
                                      mass%
Fe Ni Co Cr Al C RE Others
Alloy 556(UNS R30556) bal. 20 18 22 0.2 0.1 La=0.02 Mo=3, W=2.5, Ta
Alloy 230(UNS N06230) 3 bal. 5 22 0.1 La=0.02 W=14
Alloy 214(UNS N07214) 3 bal. 5 16 4.5 0.05 Y=0.01 Zr, B
Alloy 188(UNS R30188) 3 22 bal. 22 0.1 La=0.03 W=14
表2-2 各種耐高温腐食用コーティング(文献21)~23)を参照して一部加筆)
方法 被覆材 利点 欠点
拡散浸透法(パック法,塗布法) Cr,Al,Si,Cr-Al,Cr-Si,Al-Siなど ・‌拡散層の形成によって基材との密着性が良好なため,剥離しにくい。 ・処理できる元素が限られている。
・膜厚及び濃度制御が難しい。
・‌基材全体を炉内で処理するため,被処理体の大きさによっては大きな炉が必要になり,かつ被処理体の変形などが問題になる場合もある。
溶射法 MCrAlX(M:Co,Ni,Fe X:Y,Hf,Zrなど),
Ni-Cr,Ni-Cr-Alなど,セラミックス
・‌様々な種類の合金皮膜やセラミックスを成膜可能。
・成膜速度が大きい。
・皮膜が多孔質である。
・溶射法によっては皮膜の密着性があまり良くなく剥離しやすい場合がある。
注)‌緻密な皮膜を得るために自溶合金を用いることもある。
肉盛溶接 Ni基,Co基,Fe基耐熱合金など ・‌厚膜を施工できる。
・‌緻密で気孔の少ない皮膜を形成できる。
・‌基材との密着性が良い皮膜を形成できる。
・‌入熱が大きいために,基材の変形や硬化を防止するため予熱や後熱処理が必要となる場合がある。
・薄い皮膜を形成しにくい。
電子ビーム物理蒸着(EB-PVD) セラミックス
(YSZなどの熱遮蔽コーティング)
・‌融点が3000 ℃近いセラミックスも蒸着が可能。
・組織をナノオーダで制御可能。
・‌従来の蒸着法と比較して成膜速度が著しく大きい。
・‌柱状組織になるため皮膜が耐熱衝撃性に優れる。
・‌装置が著しく高価なため,付加価値のあまり高くない一般産業用には不利。ジェットエンジンなどの高付加価値の製品に限って適用されている。
・柱状組織になるため熱遮蔽性の面では溶射皮膜に劣る。
複合処理
(めっき+拡散処理,溶射+拡散処理)
Ptめっき+Al拡散処理,NiCr溶射+Al拡散処理 ・‌拡散処理を施すことで,各コーティングの欠点を補い新しい機能を付与することができる。 ・二段階プロセスのため工数がかかる。
表2-3 各種溶射法の特徴(文献28)を参照して一部加筆)
熱源 方法 粒子速度 熱源温度 溶射材料 密着力(MPa) 気孔率(%) 特徴
ガス式 フレーム溶射 比較的遅い
(200 m/s前後)
比較的低い
(2000 ℃前後)
金属,
酸化物
20~40 10~20 ・酸素とアセチレンを熱源とした燃焼炎中に溶射材料を連続供給して溶融させた溶射粒子を,圧縮空気で溶射することで成膜。
高速フレーム溶射(HVOF) 速い
(700 m/s前後)
比較的低い
(2000 ℃前後)
金属,
サーメット
70以上 1~5 ・‌音速を超える高速で溶射粒子を基材表面に衝突させるため,密着性が良く緻密な皮膜が得られる。
電気式 アーク溶射 中程度
(300 m/s前後)
中程度~比較的高い
(5000 ℃前後)
金属 20~40 10~20 ・‌2本の金属ワイヤ間でアーク放電させ,そのときの放電エネルギーでワイヤを溶融させる。
・‌単位時間当たりの溶射成膜量が大きい。
・‌溶射材料は電気伝導性の材料に限定。
大気プラズマ溶射 比較的速い
(500 m/s前後)
高い
(5000~
10000 ℃)
金属,
セラミックス,
サーメット
20~70 1~20 ・‌Arなどのガス中で,アーク放電によって高温高速のプラズマジェットを形成して溶射材料の溶融と加速を行う。
・‌高融点の金属,サーメット,セラミックスなど,ほとんどの材料を溶射可能。
減圧プラズマ溶射 比較的速い
(500 m/s前後)
高い
(5000~
10000 ℃)
金属,
セラミックス,
サーメット
70以上 1~5 ・‌減圧下で不活性ガスをパージして雰囲気制御したチャンバー内で施工するため,溶射材料の特性を損なうことなく施工可能。
・‌Tiなどの活性金属の成膜が可能。
・‌皮膜の密着性が良い。