荏原の長い歴史を支えてきた、ものづくりを担うリーダーたち。富津工場、藤沢工場、袖ヶ浦工場の3工場のリーダーが集まり、前後編にわたって座談会を実施。テーマはものづくりに対する各人の“熱と誠”について。また、自動化やIoTなど、ものづくりの進化についても意見交換。前編では、ものづくりに対するそれぞれの“熱い思い”を掘り下げます。
※ポンプの吸込口または吐出口の直径
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大島(藤沢):富津工場では扱っている製品の大きさがとにかく凄くて、言葉が出ませんでしたね。
中山(藤沢):藤沢工場とは製品の大きさが全然違いますし、ひとつの製品を完成させたときの達成感はすごいんだろうなと思います。
中山 貴昭(藤沢/精密)
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渡邉(富津):富津では口径数mのポンプも生産するため、工作機械はさらに大きくなります。なかにはポンプを載せるテーブルが一辺約30mの機械も。価格も高額で、現在の価格で1台数億円のものもありますね。貴重な機械だからこそ、20年、30年と使うケースもあり、日々のメンテナンスも重要な仕事。地味な作業ですが、点検は欠かせません。
須田:地味とおっしゃいましたが、そういった日々の保全作業により、荏原は日本に数台しかない機械、設備をいくつも保有しています。まさに日々の努力の賜物ですよね。
渡邉 和則(富津/インフラ)
風見(袖ヶ浦):2013年に導入した機械は、当時では世界で数台しかない機械と言われたのを思い出しました。大きな機械はあちこちにあるわけではないですし、荏原の自慢です。大型のものづくりをしたい人にはいい環境だと思います。
古川(袖ヶ浦):あの大きさを間近で見ると、自分たちの作ったものが社会を支えていると実感できるはずですよ。それが良い意味で現場で働く人のプライドになっていますよね。
中山(藤沢):私たちの課は、ドライ真空ポンプの量産を担当しています。異変や故障が起きたらすぐに共有・対処しなければ、多くの製品に影響が出てしまいます。
西山(藤沢):一番のこだわりはμm(マイクロメートル)レベルの精密な加工です。藤沢で作るドライ真空ポンプは、ケーシングの中でローターが非接触で回転する構造。このとき、ケーシングとローターの隙間(クリアランス)がポンプ性能に直結します。数十μmレベルの隙間が求められますが、狭すぎると、ポンプ回転時の熱でローターが伸びた際に当たってしまう。低い温度から数百℃の高温まで、どの状態でも隙間が保たれ、かつ高いポンプ性能を出す為に、高精度な加工が必要となります。
中山(藤沢):こういった作業で難しいのが、実物は決して“平ら”にならないことです。図面上は平らに描かれていても、μmレベルで見ると平らではない。一つ一つ形状は変わります。製造前の設計で書かれた数字と、その後の製造工程の人間が見る数字、あるいは寸法公差(※図面の寸法に対し許容できる誤差の範囲)は違うんですね。それを調整していくのが私たちの仕事。作る製品は同じでも、毎回開発しているイメージです。
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前田(富津):私たちが作る大型ポンプも、調整しながら進めていくのは同じですね。製品そのものが重いので、作っているうちに自重で歪んでしまうので、その歪みを平らな状態にしてから組立作業を行っています。
渡邉(富津):だからこそ、加工するときは基本的に完成品を使用するときと同じ置き方で加工します。製品の向きを縦・横に変えて加工する方法もありますが、私たちの場合、基本は完成形と同じ向きで行いますね。なぜなら重力を考慮しないといけませんから。これは大きい製品ゆえかもしれません。
前田 孝司(富津/インフラ)
渡邉(富津):ポンプを使う場所によって、海水の塩分濃度や水温が変わりますよね。荏原では世界各地の海水で腐食性を調査し、データを取っていたと思います。私の記憶では、30年ほど前にやっていましたかね。そういう話を聞いて、この会社のこだわりはすごいなと思いました。
前田(富津):富津は製品のスケールが大きく、建設現場みたいなもの。だからこそ安全第一なんです。その上で行うダイナミックなものづくりは大きなやりがいですね。
風見(袖ヶ浦):製品も機械も大きいからこそ、ここでしか作れないものばかり。他でやろうとしても出来るところは少ないし、一方でわれわれ機械加工はわずかな失敗ですぐ不具合になります。だからこそ緊張感を持って仕事に向かっていますよね。
古川(袖ヶ浦):1つの製品に2、3ヶ月かかることも当たり前。送り出すときは「行ってこいよ」という思いです。もちろん、自分達の作ったものがお客さまの求めるパフォーマンスを生んだときは達成感がありますね。
昔、先輩から言われたんです。お客さまは鉄の塊を買っているんじゃない。荏原の性能を求めて買っている。大きかろうが小さかろうが、性能で満足させるものを作らなければいけないんだ、と。
前田(富津):綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、すべてはお客さまのためですよね。もちろん、働いていればつらいこともあります(笑)。トラブルがあり、2、3日はお客さまにつきっきりで修理することも少なくない。ただ、直したときにすごく感謝されたり、その体験談を先輩から聞いたり。それが原動力になっていくんです。
中山(藤沢):私は工場だけではなく、お客さまの工場で装置の立ち上げも経験しました。装置を立ち上げたとき、依頼主であるお客さまが本当に感謝してくれ、とても嬉しかったです。ただ、ものづくりの現場にいると、お客さまの声を直接聞く機会が少ないのも事実。モチベーションになるからこそ、その声がもっと現場に届く仕組みがあるといいですね。
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大島(藤沢):私たち生産技術にとって、生産現場で働く方々もお客さま。その意識を持って、現場の要望に全力で応えようとしています。だからこそうれしいのは、要望をもとに改善を重ね、目的を達成したとき。一緒に喜べる仲間がいることにやりがいを感じますし、人と人とのつながりを大事にしているので、現場に足を運んで会話することを心がけています。
大島 英士(藤沢/精密)
須田:同じものづくりに励む人でも、一人一人が思い浮かべるお客さまがいて、それぞれのこだわりをもとに製品を作っているということですよね。荏原には「熱と誠」という創業の精神がありますが、荏原のものづくりを牽引されている皆さんが自分なりの「熱と誠」を実践されていて噛み砕いて、日々、荏原グループのものづくりと向き合っていることを強く感じました。
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後編:現場が語る「ものづくりの進化」。自動化やAI、IoT、データ活用の意味
中山 貴昭(製造)
精密・電子カンパニー
渡邉 和則(生産技術)
インフラカンパニー
前田 孝司(製造)
インフラカンパニー
大島 英士(生産技術)
精密・電子カンパニー
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