後編は、座談会の場所を精密の藤沢工場に移して行いました。藤沢工場は、自動化をコンセプトに作り上げた最新施設「V7棟」を擁する拠点。今回のメンバーの中にはV7棟立ち上げに関わったリーダーもおり、その話をフックにものづくりの進化や未来を語ります。
西山(藤沢):V7棟は2017年に計画が始まり、2020年3月に稼働開始した施設。コンセプトは自動化で、究極的に目指すのは、夜中に照明が消えても自動生産できること。なるべく人の作業への依存を減らそうとチャレンジしています。
大島(藤沢):すでに自動生産の取り組みも始めていて、2022年には、夜間だけでなく休日に無人で工場を動かすことにトライ。年初に計画を始めて、無事トライが成功しました。
中山(藤沢):自動化を支えているのが、IoTやデータ連携の技術です。営業が受注した段階から、その後の生産計画、そして生産現場までデータがつながっているのが特徴。システム化によって“つながりのある生産”を実現したのが大きな点ですね。
西山(藤沢):これから目指したいのは、IoTで蓄積したデータをさらに有効活用すること。現状はまだ、データをフルに使い切れているとは言えません。とはいえ、設備導入を機にいろんなデータ収集の仕組みは構築しておきたかった。『まだ使いこなせないから』と導入を延ばすのは望ましくないと思っていて。実際に使う中でも有効な活用方法が見えてきます。その意味でいち早く導入できたのは良かったですね。
西山 友二(藤沢/精密)
古川(袖ヶ浦):すごいと思ったのは、グラインダーをかけている人がほとんど見当たらないこと。普通は、最後の仕上げにグラインダーをかける人がいるけれど、それが少ないということは、ほとんど機械作業で仕上げまで行っているわけですよね。
風見(袖ヶ浦):V7棟は人の数が少なく、これが未来の姿なんだなと。私たちの工場と作っている製品は違うものの、参考にできるところはあるはずです。
渡邉(富津):作る製品の大きさは異なっても、管理の仕方は共通。取り入れられる部分はぜひ取り入れていきたいですね。
大島(藤沢):やはり、働きやすさが上がりますよね。夜中や土日の生産を自動で行えれば、人が休めるようになります。有給休暇も取りやすくなるはず。先ほど、V7棟で工場を無人で動かすのにトライしたという話をしましたが、現場の人間としては、生産計画に影響を出さないように有給休暇を取りたいという思いがあるんです。
西山(藤沢):働きやすさ以外にも、自動化にはメリットがあると思います。たとえば、工場の生産数を柔軟に変えられるようになること。藤沢工場では半導体関連の製品を作っていますが、半導体は時期によって需要の増減が激しいんですね。私たちの工場でも生産数の増減が絶えずあります。その中で人に依存した作業が多いと、同じ人数で激しい増減に対処しないといけない。一方、自動化によって人依存の作業を減らせれば、生産の増減もしやすくなるはずです。
中山(藤沢):以前、私たちの工程は女性が少なかったのですが、いまは半数以上が女性の工程もあります。これからも、女性やシルバーの方がたくさん入れるようなラインを作っていきたいですね。
前田(富津):私が考える“工場のあるべき姿”は、男女関係なく、若い人からベテランまで、誰でも製品を組めること。そのために簡略化されたマニュアルや手順書を作れば、生産性も上がっていきますよね。だからこそ、いまは技術や技能といった“暗黙知”をデータ化して、誰でも作れるようにしたいと考えています。
西山(藤沢):人依存をなくし、誰でもできるラインを作るのは理想。ただし、あくまで現場の人の技能は必要で、それがないとラインをコントロールできません。ここだけは勘違いさせたくないですね。
古川(袖ヶ浦):自動化や効率を求めるのは大事だけど、同時に技術を学んでおかないと、イレギュラーなことが起きたときに『どこに手を加えればいいか』というノウハウが自分の中にたまりません。たとえば古いタイプの機械を適切に調整するのも私たちの大切な役目。そこには個人のノウハウが求められます。荏原は古いものでも責任をもって対応できるのが価値だと思っていますから。
昔は仕事が終わった後に飲みながら先輩にいろいろ教えてもらったもの。いまはそれが難しいので、何とか工夫していかないといけませんね。
古川 浩二(袖ケ浦/荏原エリオット)
渡邉(富津):かつて荏原には職業訓練学校があったんですよね。1975年まで続き、最後の卒業生が定年になったのが2019年。昔はそこで技術を学び、また学校の上下関係の中で先輩からノウハウを教わったと思います。いまはそれに代わるものを考えなければと思いますが、ここにもデジタルやITは使えると思うんですね。たとえば技術や知識のデータベースをためて、現場で見たいときにオンデマンドで見るなど。そういった仕組みも作れればと思います。
<br><br>
須田:私たち製造メーカは、高い技術力とものづくり力で、実際の製品に仕上げることが大切な役割と責務。だからこそ、ものづくりの現場で汗を流すみなさんの生の声を聞けて良かったと思います。ぜひ“これからの荏原のものづくり”について、メッセージをいただけますか。
須田 和憲(マーケティング統括部)
中山(藤沢):荏原にいるなら、とにかくチャレンジして欲しいですね。荏原は大型から小型のものづくりまで、あるいは一品ものから量産まで、いろいろなことをやっています。自分のやりたいことを見つけやすい会社ですし、どんどんチャレンジした方がいいと思います。そのチャレンジを後押ししてくれる人も多いですしね。
西山(藤沢):ずっと荏原にいる社員だけではなく、キャリア入社の人の経験やノウハウも融合して、一緒にものづくりを進化させたいですね。現場にとって、キャリア入社の人の経験はすごく貴重なんです。自分たちが見てきたものとは違う視点や経験値がありますから。その意味で、新卒でもキャリア入社の人でも、荏原に新しく入社した人は皆、パワーアップするために大切な存在。いろんな人が一緒になってやっていきたいですね。
風見(袖ヶ浦):個人的には、工場の立ち上げやそのオペレーターも若い人にやってもらいたいですね。私自身、キャリア入社で荏原に来ましたが、その前に海外工場の立ち上げをやって自信になったので。その経験は大きいと思います。
渡邉(富津):若い人に対しては、この工場がもっと利益を上げるにはどうすればいいか、もっと儲かるにはどうすればいいか考えて欲しいですね。たとえば、機械工場を『日本一の機械工場』にするにはどうすればいいか。荏原の中で一番ではなく、日本一を目指したいんです。そうすると視点が変わるし、若い人にとっては荏原という枠を取り払った方が面白いですから。きっと型にはまらないアイデアが出て来るはずです。
風見 俊二(袖ケ浦/荏原エリオット)
前編:ものづくりに挑む人、それぞれの「熱と誠」を語り合う。たゆまぬ緻密さの追求
西山 友二(生産技術)
精密・電子カンパニー
古川 浩二(製造)
(株)荏原エリオット
風見 俊二(生産技術)
(株)荏原エリオット
ものづくりCrossTalkへ