当社グループでは、グローバルで持続的に成長する産業機械メーカーへとますます発展していくため、データ・デジタル技術の活用によってサービスやビジネスモデルを変革し、既存事業の高度化や新領域への進出を加速させています。かつては把握することが難しかった課題についてもDXで可視化し、課題解決のための的確なアクションをタイムリーに行うことで、E-Plan2025で掲げた5つの重点施策の実践を後押ししてい ます。引き続き、経営陣自らがハンズオンで各DXプロジェクトに関与し、経営・業務部門・IT部門が三位一体となってDXを推進するとともに、今後の経営変革の基盤と位置付けている「全社ERP導入プロジェクト」を、2025年に向けて着実に進めていきます。また、生成AIをはじめとした最新の技術動向にしっかりとキャッチアップし、必要な方策を実行していきます。
執行役 CIO 小和瀬 浩之
DX注目企業2022
DX認定事業者 (2025年3月31日まで)
2023年からのCxO制のスタートに伴い、CIOが中心となってグローバルでITガバナンスを強化しています。当社の経営戦略に基づき、荏原グループ全体のIT戦略、ITアーキテクチャの整合性とともに、IT投資・ITコストの最適化を図り、グループ全体の円滑なIT組織運営を推進します。
1. IT戦略の整合性
荏原グループ全体のIT戦略・方針とビジネスセグメント、グループ会社そ れぞれのIT戦略の整合性を図ります。
2. ITマネジメントプロセスの最適化
荏原グループのITにかかわるマネジメントプロセスを最適化し、グループ全 体の円滑なIT組織運営を支援します。
3. ITガバナンスの遂行
荏原グループのITにかかわる体制・人材、予算、施策及びITアーキテク チャの最適化、IT組織の効果的かつ効率的な活動を推進します。
4. 各IT組織間の連携
荏原グループ内のIT組織間の連携を強化し、各社IT部門のコミュニケー ションを更に円滑にしていきます。
当社では、生成AI活用を攻めのDXの重要な戦略の一つと位置付け、2023年、データストラテジーチームが主体となり、情報通信統括部・EOL(技術/技術開発/知的財産領域)と共に生成AIプロジェクトを立ち上げました。その後、全事業部、コーポレート各部に拡大し、2024年1月には全社プロジェクト化して企画・開発・推進しています。
過去から蓄積された社内の多くのデータ・ナレッジに対し、複数の生成AIモデルで検索・問い合わせできるセキュアな環境を構築し、2月より各事業部のユースケースの試行を開始しました。新しい技術を随時取り込みつつ、各国の規制動向も注視した上で、今後、コア業務への活用を視野に入れていく予定です。生成AIの利用により、これまで難しかった非構造化データの活用も含めたデータドリブン経営も進めます。また、MicrosoftやGoogle、ソースコード管理のGitHubの中で提供される生成AI機能の試行も開始し、業務効率化を図っていきます。
当社は、2024年1月9日に設立された一般社団法人Generative AI Japanの会員となりました。広く他社・他業種とも情報連携しながら、新技術を活用していきます。
カンパニー間のカルチャーにとらわれないDX活動を推進し、特に製造領域のDXをスコープとし各カンパニーを支援しています。PLM(製品ライフサイクル管理)などの大型システム間をつなぐハブ的な存在としてアジャイルにDX化を推進し、とにかくスピーディかつ着実に製造現場のナレッジ基盤構築を進めています。それらのシステムにおいては、社内全体 のナレッジを集約し「荏原をデータで強くする」に貢献するべく、システム開発には常に最新技術を導入して社内技術の高度化を図り、社内システ ム開発の内製化と高速化をけん引していきます。
従業員の多様化するニーズを正しく理解し、最適な対策を講じてPDCAサイクルを回していくために、点在しているデータの統合と利活用が課題となっていました。データストラテジーチームでは、人事戦略策定のためのデータ基盤の整備とデータサイエンティストによるインサイトの提示の両面からデータの利活用を進めています。今後、この取り組みをグローバルに展開し、KPIの策定と効果測定のサイクルを円滑に回していくことで、すべての人材がボーダーレスに生き生きと活躍し続けられる企業風土を創造していきます。
対面市場別組織への移行に伴い、CRM(顧客関係管理)領域を中心とした仕組みづくりを行っています。従来より活用しているSalesforceⓇを全社受注フロントシステムとして位置付け、営業情報の一元管理を実現します。また、BIツールを活用し全社ERPデータとも連携することでCRM単体では実現できない経営情報の全体可視化を目指していきます。さらに、CRMでは受注までの営業情報の蓄積だけでなく、アフター領域への活用も推進し、製品導入実績やお客様へのサポート状況を蓄積、可視化によるCX(顧客体験価値)の向上に取り組みます。
当社グループでは、荏原グローバル人材マネジメントの中で、データドリブン的な人的資本経営と先端的なHR Techを生かした企業価値向上に取り組んでいます。グローバルHCM(人的資本管理)プラットフォームととして、2019年から導入したSAPⓇ SuccessFactorsⓇを基軸にグローバ ル展開を進め、人事情報管理・人事評価・後継者育成管理・研修管理を推進しています。また、2023年から導入したAnaplanⓇにより適正な人員計画、タイムリーな予実管理を実現しています。更に、様々な実績データ管理を通じて、将来の人員計画シミュレーションの実現を目指します。
近年の目覚ましい技術革新に応じて迅速に業務プロセスを見直すため、経費精算システム、購買システムなど、業務効率化に直結したデファクトスタンダードなシステムの導入を進めてきました。2021年には、荏原製作所での運用開始を皮切りに、国内グループ会社へSAP ConcurⓇを導入し、全社業務プロセスの最適化を行うとともに、キャッシュレス化に向けて、コーポレートカード、交通系ICカード、タクシー配車アプリなどを通じた利用データの自動連携を実現させました。更に、デジタルアダプションツールの導入によって、煩雑なシステムの操作手順をわかりやすくガイドする機能を付加し、ユーザーエクスペリエンスの改善によって業務効率の向上につなげています。
グループ会社へのパイロット導入が計画どおり完了し、現在は荏原製作所及び国内外のグループ会社へのプラットフォーム構築を進めています。
最終的には全社にERPを展開することにより、グローバルでの経営データの一元管理による詳細なデータ分析を可能にし、当社グループ全体でのKPI管理や、経営判断の最適化を目指していきます
5つのマテリアリティ(重要課題)
急速なデジタル化とテクノロジーの進展により、膨大なデータが生成され、その有効な活用がますます不可欠となっています。当社グループは、このような社会動向を踏まえた先行的なアプローチとして、データ利活用のためのデータマネジメントルールであるデータマネジメント規程を制定し、推進体制としてデータマネジメントオフィス(DMO)を設立しました。DMOは、各部門のデータマネジメント活動を支援し、全社的なデータマネジメントを促進することで、荏原グループのデータドリブン経営の実現に貢献します。
統合報告書