地球環境は、人類や地球に生息するあらゆる生物、生態系の基盤であり、企業活動は健全な地球環境無くして継続できません。
荏原グループでは、気候変動は世界が直面している重大な課題であると認識し、2019年にTCFDを支持する署名を行いました。ステークホルダーとの対話を通じて、気候変動に関する取り組みと情報開示の継続的な改善を行います。
TCFD提言に基づく 情報開示サマリー2023年
TCFD提言に基づく 情報開示サマリー2022年
TCFD提言に基づく 情報開示サマリー2021年
全事業包括的なシナリオ分析を行いました。
ESGを含むサステナビリティに関する審議を取締役会の年間議題に組み込み、定期的に必要な時間を確保した上で様々な観点から議論を行っています。特に気候関連リスク・機会に対する取組みは重要テーマの一つとして位置付けています。取締役会では執行側の対応の具体化と推進に向けた議論を行い、その結果をサステナビリティ委員会へフィードバックしていく仕組みとなっています。 また、取締役は、執行側の会議体であるサステナビリティ委員会に陪席し、執行側のサステナビリティに関する取組状況を把握し、監督しています。気候関連のリスク・機会に対する取締役の関心は高く、サステナビリティ委員会においても客観的な立場より的確な助言を行っています。
代表執行役社長兼CEO兼COOが委員長を務めています。全執行役が委員として参加するほか、社外からサステナビリティ経営に関する有識者をアドバイザーとして招聘しています。気候変動に関する取り組みが当社グループの長期ビジョンE-Vision2030のマテリアリティの一つとして経営の重要課題であることを経営層全員で共有しています。
サステナビリティ委員会は、気候関連の取り組み方針を含むサステナビリティ経営全般の活動方針の設定、行動計画の策定と進捗のレビューを行っています。陪席する取締役から得た助言を活動に反映させるよう努めています。
サステナビリティ委員会の議論は、取締役会に報告し、レビューを受ける仕組みとしています。
リスク管理部門が定期的に行うリスクアセスメントの結果に基づき、リスクマネジメントパネルが短~中期に直面する重要リスクを特定しています。このリスクアセスメントでは、想定し得るリスク項目を整理した中から、事業責任者・部門責任者へのアンケートとヒアリングにより、リスク対応体制を再評価し、主管部門を明確にして運用に反映しています。
リスクマネジメントパネルが扱うリスクの定義に環境リスクが含まれており、気象災害等の急性の物理的なリスクへの対応方針は、リスクマネジメントパネルが決定しています。
気候関連のリスク・機会が資産の処分、投融資などに関わる場合は、経営会議への付議の対象としています。
中期経営計画の達成に向けた経営課題行動計画の進捗管理を行うモニタリング会議では、財務面だけでなく、気候変動を含む非財務に関する課題についてもモニタリングしています。
ガバナンスに関する情報(2023年)
取締役会は、2023年から2025年までの3年間の中期経営計画E-Plan2025で策定した基本方針に基づく執行側の中期経営課題行動計画の非財務目標(気候関連リスク・機会に対する取組み等を含む)と非財務KPIの設定について審議 を行いました。非財務KPI・目標設定後は各指標の推移についてサステナビリティ委員会及び取締役会で定期的に報告を受けています。達成状況や課題、今後のアクションプランなどを確認し、必要に応じて施策の改善・強化をサポートしていきます。また、2022年度より非財務目標の達成を後押しする仕組みとしてESG評価指標を役員報酬に連動させる制度を導入しています。
2022年12月に機関投資家を対象にESG説明会を開催しました。取締役会議長が、取締役会が行っている環境、社会に関する議論について説明しました。その議論のテーマの一つとして、取締役会メンバーである代表執行役社長から、2022年7月に公開したオイル&ガス市場向け事業と半導体製造市場向け事業の気候関連シナリオ分析について説明しました。
取締役会は、2021年からTCFD提言に基づく開示情報を開示前に確認し、助言を行っています。2023年の本開示も取締役会による確認プロセスを経て公開しています。
サステナビリティ委員会は、2022年に4回開催しました。全ての回で気候関連を含む環境に関する議題を設定し、カーボンニュートラルや環境マネジメントの取り組み方針、施策の進捗状況について議論しました。
2022年下期から、建築・産業設備市場向け事業、水インフラ市場向け事業、固形廃棄物処理市場向け事業の気候関連シナリオ分析を各事業部門が行い、その結果をサステナビリティ委員会に報告しました。2023年に開示する気候関連情報は取締役会による確認、サステナビリティ委員会による確認を行った上で開示しています。
気候関連のリスク・機会を含む非財務の定義を2022年のサステナビリティ委員会で複数回審議し、当社グループとしての考え方を整理しました。この定義の下に、2023年からスタートした中期経営計画E-Plan2025の非財務目標に対するアクションプランを「非財務経営課題行動計画」として設定しました。気候関連の機会・リスクを含む非財務KPI全体のモニタリングをサステナビリティ委員会が行います。
気候関連シナリオ分析で特定したリスクのマネジメント方針、年度予算、事業計画、成果目標の設定、施策のモニタリングをサステナビリティ委員会が主導することを検討していきます。
2022年は4回の定例リスクマネジメントパネル(RMP)を開催し、その中で当社グループの重要リスクを特定しました。特定したリスクの主管部門の明確化、対策の確認を行いました。気候変動に関しては、「持続可能な 社会への対応」がグループ重要リスクに特定され、カーボンニュートラルへの取り組みの方向性や進捗状況が確認されました。また、地震や台風、洪水などの自然災害が当社グループの重要リスクとして特定され、災害時に事業を継続するためのBCM(Business Continuity Management)の 一環として各部門における訓練等や今後の対応策について議論を行いました。
「2050年カーボンニュートラル」 を当社グループとして目指すために、2022年1月に発足したカーボンニュートラルプロジェクトは、2022年12月に”荏原グループが目指すカーボンニュートラル”を発表し、当社グループのGHG排出量削減目標や、カーボンニュートラル(以下、CN)に向けたロードマップを策定しました。2023年からChief Risk Officer(CRO)管下のCN推進課として常設部門となりました。CN推進課は、CNプロジェクトが設定したロードマップに沿って施策を遂行しています。CNに向けた活動方針や、活動の進捗状況についてサステナビリティ委員会にCN推進課が付議し、審議・報告しています。
気候変動が当社グループの事業に及ぼす影響を以下のプロセスで検討しました。
2023年:対面市場ごとの戦略に関する情報を2022年開示済み情報を含めて更新しました。
リスク・機会の抽出と評価 2023年更新情報
シナリオ分析 2023年更新情報
財務インパクト評価 2023年更新情報
対応策設定 2023年更新情報
2021年より、対面市場ごとの気候関連シナリオ分析に着手しました。2022年にオイル&ガス市場向け事業と半導体製造市場向け事業の気候関連シナリオ分析の結果を開示しました。2023年は、建築・産業設備市場向け事業、水インフラ市場向け事業、固形廃棄物処理市場向け事業の気候関連シナリオ分析結果を開示します。
リスク評価は、下表の「リスク評価」に示す移行リスクと物理リスクの中分類において、各対面市場に起こりうる事象を小分類として抽出し、その事象による財務的な影響の大きさを「大」「中」「小」で相対評価しました。機会評価は、リスク評価で抽出した小分類に加え、下表「機会の側面」を加味して各対面市場に起こりうる事象を抽出し、その事象による財務的な影響の大きさを「大」「中」「小」で相対評価しました。
TCFD提言で示されている移行リスク、物理的リスク、機会に沿って当社グループの主要な対面市場ごとに2050年までの気候関連リスク・機会を特定しました。
SASB,IEA,電機・電子業界気候変動対応長期ビジョンなどの信頼性の高い文献を参照し、当社事業に影響を与える可能性のあるリスク項目を抽出し、リスク・機会の重要度を評価しました。
リスク項目 | 重要度 評価 |
主なリスク・機会 | リスク | 機会 | ||
中分類 | 小分類 | |||||
移行リスク | 政策/ 規制 |
炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 | 大 | ・GHG排出に炭素価格がかかる。 ・当社主要生産拠点でGHG排出規制がかかる。 |
● | |
業界/ 市場 |
顧客企業・行政・市場の変化 | 大 | ・石油、ガス、アンモニアの需要動向が売上高や営業利益に影響を与える。 | ● | ● | |
物理リスク | 急性 | 異常気象の激甚化 | 大 | ・豪雨や台風により、当社主要生産拠点やサプライヤが被災することにより生産の停止が起きる。 | ● |
リスク項目 | 重要度 評価 |
主なリスク・機会 | リスク | 機会 | ||
中分類 | 小分類 | |||||
移行リスク | 政策/ 規制 |
炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 | 大 | ・GHG排出に炭素価格がかかる。 ・当社主要生産拠点でGHG排出規制がかかる。 |
● | |
業界/ 市場 |
顧客企業・行政・市場の変化 | 中 | ・半導体需要増加に伴い、PFCガス削減需要が高まる。 ・EV,FCVの普及や、スマート技術・スマート社会の進展などにより、半導体需要が伸びる。 |
● | ||
物理リスク | 急性 | 異常気象の激甚化 | 大 | ・豪雨や台風により、当社主要生産拠点やサプライヤが被災することにより生産の停止が起きる。 | ● |
リスク項目 | 重要度 評価 |
主なリスク・機会 | リスク | 機会 | ||
中分類 | 小分類 | |||||
移行リスク | 政策/ 規制 |
炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 | 大 | ・炭素税課税やグリーン電力購入による製造コスト・対策コスト増加。
・国境炭素税普及による販売コストの増加。
・再エネ賦課金の高騰に伴う電力調達コスト増加。
|
● | |
温暖化防止に向けた規制 | 大 |
・ビル・マンション・工場などにかかるGHG排出規制強化による省エネルギー型製品やノンフロン型製品の販売機会拡大
|
● | |||
業界/ 市場 |
顧客企業・行政・市場の変化 | 大 | ・ビル・マンション・工場などのGHG排出削減ニーズが高まる。 | ● | ||
物理リスク | 慢性 | 平均気温の上昇 | 大 | ・主要生産拠点における夏季の空調コストの増加 | ● | |
・エンドユーザーにおける空調設備需要の増加 | ● | |||||
急性 | 異常気象の激甚化 | 大 | ・豪雨や台風により、当社主要生産拠点やサプライヤが被災することにより生産の停止が起きる。 | ● | ||
大 | ・被災した設備のメンテナンスや交換需要の増加 | ● |
リスク項目 | 重要度 評価 |
主なリスク・機会 | リスク | 機会 | ||
中分類 | 小分類 | |||||
移行リスク | 業界/ 市場 |
顧客・行政・市場の変化 | 大 | ・顧客の環境配慮ニーズに対応できない場合、入札参加資格を満たせず受注が減少する。 | ● | |
・世界人口の増加による食料需要の増加と気候変動による耕作地の変化により、海外での農業関連の水インフラの売上高が増加する。
・水害対策関連の受注・売上高が増加する。 |
● | |||||
物理リスク | 慢性 | 降水・気象パターンの変化 | 大 |
・生産拠点の被災による生産停止
・気象災害によりサプライチェーンが断絶し物流コストが増加する。 ・土木構造による治水対策が増加し、排水機場需要が減少。 |
● | |
・降水パターンの変化に伴う下水道設備、河川排水設備、などの需要増加により売上高が増加する。
・日本や東南アジアの水資源ひっ迫により、節水に寄与する水管理システム需要が拡大し、売上高が増加する。 |
● | |||||
急性 | 異常気象の激甚化 | 大 |
・豪雨や台風により、当社主要生産拠点やサプライヤが被災することにより生産の停止が起きる。
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● | ||
・水害頻発により、浄水施設や河川排水設備、農地防災施設強化の需要が増え、売上高が増加する。
・都市部の水害対策需要が拡大し、売上高が増加する。 ・水害への迅速対応のために遠隔監視・操作など水管理設備の需要が高まり、売上高が増加する。 |
● |
リスク項目 | 重要度 評価 |
主なリスク・機会 | リスク | 機会 | ||
中分類 | 小分類 | |||||
移行リスク | 政策/ 規制 |
炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 | 大 | ・廃棄物焼却に伴うCO2排出規制への対策コスト増。
・焼却炉、ボイラ製造に炭素税や炭素価格が適用され、製造コスト増。
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● | |
・バイオマス発電、廃棄物発電、CCUS付廃棄物処理施設の需要増加
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● | |||||
業界/ 市場 |
顧客企業・行政・市場の変化 | 大 |
・3R*、サーキュラーエコノミー、脱プラスチックなどにより焼却される廃棄物が減少し、廃棄物焼却プラントの需要が減少する。
(*3R:Reuse, Reduce, Recycle) |
● | ||
・廃棄物を資源として循環させる需要が国内外で高まる。
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● | |||||
技術 | 低炭素・省エネルギー・次世代技術の普及 | 大 |
・廃棄物処理に伴うGHG排出を削減のための研究開発コストの発生。
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● | ||
・ケミカルリサイクルなどカーボンニュートラル実現に向けたソリューションの需要が高まる。
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● | |||||
物理リスク | 急性 | 異常気象の激甚化 | 中 | ・被災によるサプライチェーンの途絶 | ● | |
・被災した施設の修繕工事の増加。
・近隣の廃棄物処理施設の被災により、委託処理依頼の増加。
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● |
重要度評価で特定したリスク・機会に対して1.5℃シナリオと4℃シナリオにどのような違いがあるのかを比較するためにIEA* WEO**などの客観的なシナリオを参照しました。
収集したパラメータやシナリオを基に、4℃シナリオ、1.5℃シナリオでは事業環境がどう変化するか。変化する事業環境の下で、当社、顧客、政策/規制、調達先がどう変化するか。更に、新規参入者や代替品の出現可能性についてシナリオを描きました。
*IEA : International Energy Agency:国際エネルギー機関
**WEO:World Energy Outlook
対面市場ごとの4℃シナリオ・1.5℃シナリオ
分析に用いた主なパラメータ
当社グループの財務情報や非財務情報、IEAや各国の公開情報、国際機関のデータベースなどを利用して、気候関連の移行リスク、物理的リスクによって受ける財務インパクトを当社グループの主要な対面市場ごとに試算しました。
財務インパクト評価の結果を基に、気候関連リスク・機会に対する2050年までの対応策を検討しました。
シナリオ分析に基づく気候関連の機会・リスクを加味していない各事業の2050年想定営業利益=100に対して、シナリオ分析に基づく気候関連のリスク・機会を加味した場合の「成り行き」「対応策後」のギャップを示します。
成り行き:現状の製品・サービス、生産体制に気候関連のリスク・機会の影響を考慮した場合の財務インパクト
対応策後:成り行きに対して、気候関連対応策を講じた場合の財務インパクト
長期ビジョンE-Vision2030の策定にあたっては、中長期的な社会情勢や市場環境の変動をシナリオプランニングによって分析しています。長期的トレンドとしての変動リスク、短期的なボラタイルリスク、対面市場・当社事業別リスクを特定しています。特定した機会・リスクは、コーポレートガバナンス体制の下で管理されています。
また、リスク管理部門が定期的に行うリスクアセスメントの結果に基づき、短~中期に直面する重要リスクを特定しています。このリスクアセスメントでは、想定し得るリスク項目を整理した中から、事業責任者・部門責任者へのアンケートとヒアリングにより、リスク対応体制を再評価し、主管部門を明確にして運用に反映しています。
対面市場ごとに特定した重要な気候関連のリスクと機会は、中期経営計画のアクションプランである「非財務経営課題行動計画」と「経営課題行動計画」で管理しています。2023年からの3ヵ年における中期経営計画E-Plan2025では、気候関連リスク・機会を「非財務経営課題行動計画」で管理しています。
「非財務経営課題行動計画」は主に社会・環境指標(非財務)を管理するためのアクションプラン、「経営課題行動計画」は主に、経済指標(財務)を管理するアクションプランです。両計画の進捗は、代表執行役社長兼CEOがモニタリング会議を主宰し、各事業セグメントのカンパニープレジデントから受けた報告をレビューしています。さらに、サステナビリティ委員会において当社グループ全体として、E(環境),S(社会),G(ガバナンス)に関わる指標と目標に対する進捗状況を確認し、非財務価値向上にむけた活動方針を定めています。
「非財務経営課題行動計画」は気候関連の指標を含んでいます。E-Plan2025においては、顧客が当社製品を使用することによるCO2排出削減量(削減貢献量)や、脱炭素社会に向けた新製品の開発目標など、気候関連リスク・機会を含む非財務重要指標をモニタリングしています。「経営課題行動計画」は財務指標の進捗をモニタリングしています。
当社グループの事業活動の社会・環境価値の側面を「非財務」と定義しています。社会や環境の価値に影響を及ぼす指標を非財務指標と定義し、CO2の排出量や削減貢献量は非財務指標としています。
2023年からスタートした当社の中期経営計画E-Plan2025において、非財務指標と目標を設定し、社会・環境価値創造の進捗をモニタリングしています。2023年に策定した2025年までの非財務経営課題行動計画は、2030年の成果目標からのバックキャストによって2025年までの単年度ごとの目標を設定しています。気候関連シナリオ分析によって特定した対面市場ごとの気候関連リスクと機会に関する指標と目標は、非財務経営課題行動計画で管理しています。さらに、水素関連や陸上養殖システム、培養肉製造システムなどの新規事業も気候関連のリスク・機会を含む様々な社会課題解決に向け、事業化を目指しています。
気候関連の指標・目標として、2030年までにGHGをCO2換算で1億トン相当削減することを掲げています。その他の成果目標も気候関連の移行リスク、物理的リスクに関連しています。成果目標達成に向けた施策を推進しています。
マテリアティ:当社長期ビジョンE-Vision2030におけるマテリアリティ。5つのマテリアリティを設定しています。気候関連のリスク・機会に直接的に関わるマテリアリティは3つです。
総合的なリスク評価と気候関連シナリオ分析によって特定したリスク・機会を含み、2030年までの指標・成果目標を設定しています。
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