塚本 圭祐* Keisuke TSUKAMOTO
西山 健一* Kenichi NISHIYAMA
佐々木 稔* Minoru SASAKI
金沢 稔* Minoru KANAZAWA
佐藤 浩一* Koichi SATO
平川 陽一* Yoichi HIRAKAWA
*
荏原環境プラント(株)
秋田県横手市に新統合ごみ処理施設である「クリーンプラザよこて」を納入し,2016年3月末に竣工した。本施設は,熱回収施設とリサイクルセンターで構成される。熱回収施設では,当社最新式のエバラHPCC21型ストーカシステムを採用して1.3以下の低空気比で運転し,かつ,ボイラの蒸気条件を4 MPa×400 ℃と本施設規模では国内最高レベルの高温高圧化を図ることで,約20%と非常に高い発電端効率を達成した。リサイクルセンターでは,鉄やアルミ等に関して98%を超える高い純度で資源回収できることを確認した。また本施設では,冬期間に貯蔵した雪を夏季の冷房に利用する雪室や,太陽光発電といった自然エネルギーを積極的に導入している。さらには,災害時に後方支援拠点として機能するよう,十分な居住空間と必要な備蓄品を確保していることも大きな特長である。
On March 30, 2016, the Clean Plaza Yokote, a new integrated waste treatment plant, which we delivered in Yokote in Akita Prefecture, was completed. This plant consists of a heat recovery facility and a recycle center. The heat recovery facility uses our latest and proven system, EBARA HPCC21 stoker, to allow operation at a low air ratio of 1.3 or less, and the boiler steam condition with high-temperature and high-pressure (4 MPa × 400 °C), which is the highest level for facilities of this scale in Japan. As a result, the gross power generation efficiency has been significantly improved to reach to as high as approximately 20%. We confirmed that the recycle center can recover iron and aluminum at high purity of over 98%. The plant also uses natural energy proactively with a solar power system, and a snow storage chamber that stores snow in winter and uses it for air conditioning in summer. Another important feature of the plant is that it stores necessary stockpiles and secures sufficient space so that it can work as a disaster support base.
Keywords: Municipal waste, Grate-type incinerator, Incineration plant, Environment, Recycle, Low air ratio combustion, Dioxins, Gross power generation efficiency
2016年3月末に「クリーンプラザよこて」を秋田県横手市に納入した(図1)。市内に三箇所あったごみ処理施設の老朽化に伴い,それらを一箇所に統合した新ごみ処理施設である。1日当たり95 tの可燃ごみを最新式のストーカ式焼却炉2基で処理する熱回収施設及び,不燃・粗大ごみを9 t,資源物を21 t処理するリサイクルセンターで構成される。
本施設は,秋田県内では初めてのDBO方式(設計,建設,運営20年間の包括契約)によるごみ処理施設である。当社[荏原環境プラント㈱]を代表企業として地元の建設会社二社[伊藤建設工業㈱,横手建設㈱]とで共同企業体を構成し,設計・調達及び建設を行い,さらに施設稼働後の管理・運営及び,資源化業務を20年間にわたって当社出資のSPC(Special purpose company)が請け負うものである。
図1 クリーンプラザよこて
施設全体を図2に示す。
図2 施設概要
横手市の既設炉においては,一般持込みの車輌台数が多く,ピーク時には待車の列が敷地外まで及ぶことがあった。そこで本施設では,ごみの搬入・搬出にかかる計量システムにICカードを採用して計量に要する時間を短縮し,収集車及び一般持込車の渋滞防止を図った。また,一般持込者の安全性や利便性を考慮して,持ち込んだ全ての混載ごみをリサイクルセンター内の専用エリア一箇所で受け入れるよう,ワンストップサービスを採用した。
熱回収施設のフローシートを図3に,主要なシステムの概要を表1に示す。また,公害防止条件を表2に示す。
図3 熱回収施設 フローシート
受入供給設備 | |
ごみピット | 投入ピット/貯留ピットによる2段ピット方式 |
ごみクレーン | 全自動クレーン×2基 |
燃焼設備 | |
焼却炉 | 全連続燃焼式ストーカ炉(エバラHPCC21型) |
処理量:95 t/d(47.5 t/d×2基) | |
燃焼ガス冷却設備 | |
ボイラ | 過熱器付自然循環式水管ボイラ |
蒸発量:最大6.4 t/h×2缶 | |
蒸気条件:4.0 MPa×400 ℃(過熱器出口) | |
発電設備 | |
蒸気タービン | 9段落衝動減速機付1段抽気復水式 |
発電機 | 三相交流同期発電機 1670 kW |
排ガス処理設備 | |
排ガス減温方式 | 水噴射式 |
集じん方式 | バグフィルタ |
脱硝方式 | 尿素水による無触媒脱硝 |
HCl・SOx除去方式 | 乾式(消石灰噴霧) |
ダイオキシン類・ 水銀対策 |
活性炭吹込式 |
余熱利用設備 | |
主な余熱利用先 | タービン排気を有効利用したロードヒーティング |
灰出し及び灰処理設備 | |
焼却灰 | ピット&クレーンによる搬出/太平洋セメント㈱大船渡工場においてセメント原料として資源化 |
飛灰 | キレート処理後,ピット&クレーンによる搬出 |
排水処理設備 | |
プラント排水 | 凝集沈殿+砂ろ過処理後,場内再利用によって無放流 |
生活排水 | 合併浄化槽処理後,放流 |
ごみ汚水 | ピット内循環 |
規制物質 | 公害防止条件 | |
ばいじん | g/m3(NTP)※1 | 0.007以下 |
塩化水素 | ppm※1 | 50以下 |
硫黄酸化物 | ppm※2 | 30以下 |
窒素酸化物 | ppm※1 | 80以下 |
一酸化炭素 | ppm※1 4 h平均 1 h平均 |
20以下 80以下 |
ダイオキシン類 | ng-TEQ/m3(NTP)※1 | 0.04以下 |
リサイクルセンターのフローシートを図4に,システム概要を表3に示す。
図4 リサイクルセンター フローシート
不燃ごみ・粗大ごみ処理ライン | |
処理能力 | 1.8 t/h |
破砕方式 | 低速二軸せん断式+高速縦型回転式 |
選別・回収方式 | |
1)鉄 | 磁選機で選別し,資源として回収 |
2)アルミ | アルミ選別機で選別し,資源として回収 |
3)可燃・不燃残渣 | 熱回収施設で焼却処理 |
缶類処理ライン | |
処理能力 | 0.38 t/h |
選別・回収方式 | |
1)鉄 | 磁選機で選別,圧縮装置で圧縮成型し, スチール缶プレス品として資源回収 |
2)アルミ | アルミ選別機で選別,圧縮装置で圧縮成型し, スチール缶プレス品として資源回収 |
3)処理困難物 | 手選別で除去後,破砕処理 |
びん類処理ライン | |
処理能力 | 1.14 t/h |
選別・回収方式 | |
1)生きびん | 手選別後,専用容器で資源物として回収 |
2)無色びん | 手選別後カレットとして資源回収 |
3)茶色びん | 手選別後カレットとして資源回収 |
4)その他色びん | 手選別後カレットとして資源回収 |
5)処理困難物 | 手選別で除去後,破砕処理 |
古紙処理ライン | |
処理能力 | 2.58 t/h |
回収方式 | |
1)新聞 | 圧縮梱包後,資源物として回収 |
2)雑誌 | 圧縮梱包後,資源物として回収 |
3)ダンボール | 圧縮梱包後,資源物として回収 |
その他資源化物 | |
1)金属類 | 貯留後に資源物として回収 |
2)乾電池 | 貯留後に回収 |
3)小型家電 | 貯留後に資源物として回収 |
4)ガラス・せともの | 貯留後に資源物として回収 |
5)衣類 | 貯留後に資源物として回収 |
6)蛍光管 | 貯留後に回収 |
主要なマイルストーンを表4に示す。
表4 工事工程
本施設では,最新のストーカ式焼却炉モデルであるエバラHPCC21型ストーカシステム 1)を採用した。それによって,空気比1.2~1.3での安定した運転が可能となり,ボイラ効率,ひいては発電効率の向上に大きく寄与している。
本施設では,安全・安定的なごみ処理を最優先するとともに,地域の「エネルギーセンター」としての役割を果たすため,発電効率の向上を図った。その際に,最も重要なのはボイラの高温高圧化である。当社のこれまでの実績を基に,本施設規模のボイラの蒸気条件としては国内最高レベルの4 MPa×400 ℃を採用した。また,同時に復水器の高真空化を図ることによって,設計値19.6%の発電端効率を設定した。図5に,環境省発行の「高効率ごみ発電施設整備マニュアル」 2)の参考資料1に示される「図参1-2 ごみ焼却施設の発電効率実績と試算結果」に,本施設を追加プロット(図中の<font color="red">★</font>印)したものを示す。過去の実績や4 MPa×400 ℃の試算結果と比較して,本施設の発電効率の約20%は100 t/dの施設規模では非常に高いことが分かる。
図5 本施設の発電効率
横手市では,本施設を災害時の広域の後方支援拠点として位置付けている。そのため,万一の災害に備えて次の点に配慮した施設としている。
後方支援拠点として最も重要なことは,施設の耐震性である。このため,建物については,大地震後でも十分に使用可能なレベルとし,災害時に発生する災害廃棄物の受入れ及び処理を迅速に行えるよう,構造設計を行った。
本施設では,災害廃棄物が発生した際にも極力多くのごみを受け入れられるよう,3600 m3のごみピット容量を有し,約15日分のごみの貯留を可能とした。
また,災害時に系統からの電力が絶たれた場合にもごみ処理を可能とするため,非常用ディーゼル発電機によって焼却炉1炉を立上げ可能なものとした。1炉立上げ後には,常用の蒸気タービン発電機を起動させ,その後に2炉目の立上げも可能となる。
また一方で,同時に上水が絶たれたとしても,施設内には井水揚水設備及び前処理装置も備えており,井水をプラント用水に供給することで焼却施設の運転を継続可能なよう配慮している。
災害時に後方支援拠点として機能するよう,管理棟は最大で140名が3日間居住可能な空間を確保するとともに,飲料水・食料・毛布・医薬品他を備蓄管理している。
本施設では,地域住民への啓発を主目的として,自然エネルギーを積極的に導入している。主な設備を次に紹介する。
冬期間に雪を独立した建屋内(雪室)に貯蔵し,夏季にその冷気を有効活用する雪冷房システムを導入した。本システムは,管理棟の1階部分の冷房の一部を賄うものである。
図6 雪室
10 kWの発電能力をもつ太陽光発電システムを導入した。一般的に降雪地域ではパネル上に雪が積もるので太陽光発電は不向きと言われているが,通常より勾配をもたせることで堆雪を防止し,冬期の発電も可能とした。
図7 太陽光発電
熱回収施設では,2015年10月末からごみを本格的に受け入れ,同年11月から実負荷焼却試運転を開始した。12月末までには発電所としての使用前自主検査を終了し,2016年1月中旬に予備性能試験,2月中旬に引渡性能試験を行った。
使用前自主検査の負荷試験結果を表5に示す。
各ボイラは最大連続蒸発量6.4 t/h付近の運転を行い,蒸気タービン発電機は定格出力1670 kWで運転した。その際の,主蒸気流量・温度・圧力,発電機出力他は表5に示すとおりであった。主蒸気は2 t/h程度が余剰となったが,その分はタービンバイパスとした。負荷試運転時の発電端効率を計算すると16.6%となる。ただし,主蒸気の余剰分を補正すると発電端効率は20.0%となり,設計値の19.6%を満足する結果を得た。
表6に引渡性能試験時の排ガス測定結果他を示す。ボイラ出口酸素濃度は2.7%で,約1.2と非常に低い空気比で安定して運転することができた。CO及びNOxはそれぞれ平均で10 ppm/5 ppm(1号/2号),58 ppm/47 ppm(1号/2号)といずれも基準値に対して十分に低く,また,その他ダイオキシン類をはじめとする公害防止条件についてもいずれも基準値を十分に満足する結果であった。
項目 | 単位 | 結果 | |
ボイラ主蒸気流量(1号/2号) | Z1/Z2 | t/h | 6.15/6.13 |
ボイラ主蒸気温度(1号/2号) | ― | ℃ | 400/401 |
ボイラ主蒸気圧力(1号/2号) | ― | MPa | 3.94/3.95 |
タービン入口主蒸気流量 | ― | t/h | 9.82 |
タービンバイパス蒸気量 | Zb | t/h | 2.10 |
発電機出力 | Pg | kW | 1670 |
ごみ処理量1号 | B1 | t/h | 2.01 |
ごみ処理量2号 | B2 | t/h | 2.04 |
ごみ発熱量 (演算値) | H | kJ/kg | 8940 |
発電端効率※1
発電端効率※2 タービンバイパス分を補正 |
η η’ |
% | 16.6% |
20.0% |
項目 | 単位 | 判定基準 | 結果 | 判定 | |
1号 | 2号 | ||||
焼却能力 | % | ≧100% (≧47.5 t/(d・炉)) |
≧100% | ≧100% | 合格 |
熱灼減量 | % | ≦5 | <0.1% | ≦0.9% | 合格 |
ばいじん濃度 | g/m3(NTP) | ≦0.007 | <0.002 | <0.002 | 合格 |
硫黄酸化物 | ppm | ≦30 | 22 | 17 | 合格 |
窒素酸化物 | ppm | ≦80 | 58 | 47 | 合格 |
塩化水素 | ppm | ≦50 | 29 | 24 | 合格 |
一酸化炭素 | ppm 4 h平均 |
≦20 | 10 | 5 | 合格 |
ダイオキシン類 | ng-TEQ/m3
(NTP) |
≦0.04 | 0.00054 | 0.0039 | 合格 |
0.00016 | 0.0081 | 合格 | |||
アンモニア | mg/m3(NTP) | ― | 1.1 | 1.7 | ― |
水銀 | mg/m3(NTP) | ― | <0.01 | <0.01 | ― |
ボイラ出口酸素 | %(wet) | ― | 2.5 | 2.9 | ― |
空気比 | ― | ― (排ガス中水分25%にて) |
1.2 | 1.2 | ― |
リサイクルセンターでは,2015年12月下旬からごみ及び資源物の受入れを試験的に開始し,2016年2月から横手市全域からの受入れを行った。2016年1月下旬に予備性能試験,2月下旬に引渡性能試験時を実施した。引渡性能試験時における資源化物の純度を表7に示す。いずれも高純度で資源回収できることを確認した。
破砕鉄 | 98.3% | 無色びん | 100.0% |
破砕アルミ | 98.1% | 茶色びん | 100.0% |
鉄缶 | 99.6% | その他びん | 100.0% |
アルミ缶 | 100.0% |
当社は2016年6月に,㈱荏原製作所藤沢事業所内に遠隔サポートセンターを開設した(図8)。当センターは,全国各地で操業している焼却施設の状況を熟練した運転技術者がモニターし,不測の事態にも的確かつ迅速に対応するための施設である。当センターにおいて,クリーンプラザよこての運転データ・状況及びITV画像を遠隔で監視することで,クリーンプラザよこての安定操業の支援を行っている。
図8 遠隔サポートセンター
本施設は2016年3月30日に竣工し,熱回収施設・リサイクルセンターともに順調に稼働している。竣工後の2016年6月からは遠隔監視による運転支援も行いながら,今後の20年間という長期間の運転・維持管理を滞りなく行い,持続可能な社会の構築に貢献する所存である。
最後に,本施設の建設に当たり多大なるご指導・ご協力を頂いた横手市の方々をはじめとする関係各位に厚く御礼申し上げる。
1) 秋葉直人・井口哲治,北海道岩見沢市向けストーカ式焼却施設「いわみざわ環境クリーンプラザ」の建設・納入,エバラ時報,No.249,P.14-20(2015-10).
2) 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課,高効率ごみ発電施設整備マニュアル,平成22年3月改訂.
藤沢工場ものづくり50年の歴史
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